西戸崎・志賀島エリア EAST COAST
アラタ・クールハンドさん
イラストレイター・ライター
2013年より在住
広告、挿絵、ロゴタイプの制作などの「描く」と、文章執筆の「書く」を仕事とする。09年FLAT HOUSE(フラットハウス)と命名した首都圏に残る古い平屋住宅と、そこで暮らす住人たちを紹介する『FLAT HOUSE LIFE』を発刊。以降、住宅から生き方を考えることをテーマにした著書を多く発表する。ビンテージ建具などを使用し、オリジナル性を生かした中古住宅のレストアを手掛ける『FLAT HOUSE planning』を主宰。現在東京と福岡の2ヶ所の木造平屋で暮らす「2拠点交互生活」を実践中。
きっかけは一軒の米軍ハウス
東京都下の木造平屋=フラットハウスとそこに住う人々の暮らしに関する書籍を上梓していた筆者(私)が、震災後九州との二拠点生活を画策中に出会った西戸崎の米軍ハウス。この出会いが私をこの地に呼び込んだのです。執筆の題材である平屋が全国でも稀有なロケーションのこの町に導いてくれたこと、そしてそこで古家の再生仕事やゲストハウスを運営していることには、とてもエモーショナルなものを感じています。
-
01
数分歩けばすぐビーチ
-
02
フェリーで博多天神へ
-
03
国立公園も徒歩圏内
志賀島・西戸崎の美味しい魚
よしだフードセンターは、私たちのゲストハウスから徒歩2分の場所にある個人経営の小さなスーパー。その中にある鮮魚店には五島灘や玄海灘の獲れたての魚が並びます。中でも春から夏に漁れるミズイカ(アオリイカ)は絶品。しかも、博多天神だって十分安価なのにそれを上回るリーズナブル価格。冷蔵棚を見たら手ぶらで帰ることはできないでしょう。オススメは店内で捌いた刺身盛りを使ってつくる『海鮮丼』。付属の大葉と一緒にアラレ状にたたき、ガバッと酢飯にのせて宗像産のたまごを落とせば完成。九州の甘みのある醤油がよく合います。
そしてもうひとつは、志賀島の志賀海神社参道沿いにある『上野市兵衛商店』の魚。近海産のさまざまな魚を開いて塩を振り天日干しした「塩魚」は、まるで生魚のよう。火を通しても瑞々しさ・弾力性が失われず、一般に売られている干物とはまったく別物。どれを食べても絶品で、その未体験の食感に驚くはずです。おかずとしてはもちろん肴としても最適。それには駅側のリカーショップムラセで入手できる、八女の名酒『繁枡』が相性抜群。とてもスッキリした呑み口で魚の味を引き立ててくれます。
当店の新鮮な近海産魚介類でシンプルな海鮮自炊を楽しんでみてください。
今も町内に残る昭和のフラットハウス巡り。
わがエリアの魅力は、背の低い建物が多い町並みです。おかげで空も広い。もちろんそのような景色は他の町にもあるとは思いますが、その上幅も広く格子状の道路に整然と仕切られている町というのは稀でしょう。これは1960年代まであった米軍基地の名残だといわれており、そのおかげで今でも日中子どもたちがボール遊びできたり、猫がのんびり昼寝をしたりする風景がそこかしこの道端で見られたりします。
そんな道路が走るこの町の楽しみ方は、レンタサイクルでポタリングしながら往時から残る米軍ハウスや木造家屋を散策すること。それらも私が住み始めた頃に比べると随分と数を減らしてしまいましたが、それでもタワーマンションのような高層建築物が視界に入ってこない景色は、今や希少です。
自然豊かゆえの新鮮な空気や、往来をゆく人が少ないのに閑散とした寂しさが感じられないというのもこのエリアの魅力。駅を一歩出ればその空気の良さに気づくことでしょうし、すれ違う人に挨拶をすれば概ね会釈が返ってきます。樹々の中をすり抜けて来る海風を受けながら、昭和の残滓を探すひとときをのんびり楽しんでください。
広い空と低い家々の町並みを、豊かな緑が生み出す新鮮な空気を吸いながらポタリングで満喫してください。
米軍ハウスに暮らしそこで働く人々の紹介
築半世紀以上の米軍ハウスに住みつつ、半分を店舗にしている面白いショップがこの《marinford》です。首都圏にはハウスショップは結構ありますが、福岡ではほとんど見られません。しかも自宅兼店舗での運営というのは他のベースタウンでもめずらしいケース。大幅なリノベートはせず、ほぼフルオリジナルで使っているというのもまたレアです。
営業はオーナーの高木さんが並行してやっている塗装業のない週末のみ。時々平日もオープンしていますが、基本はオーナーの予定に則しての開店です。エキセントリックな運営だなぁと思われるかもしれませんが、実はこの暮らし方は私が本にしてまで推薦しているライフスタイルなんです。
安価な古家を借りて固定費を低く抑え、そこに住みながら自分の好きな仕事で生きていく。住宅ローンに追われ日々電車に詰め込まれて背の高いビルで働くような現代人とは真逆の生き方かもしれません。私はこのような暮らし方をホームショップスタイルと名付けていますが、80年代のSOHOのように今後日本人のもうひとつの生き方の主流になってゆけばと良いなあと思っています。
店内は高木さんの脳内を覗いているかのような品揃え。この店は何を売っている店かとカテゴライズするのは無粋でしょう。もしかするとショップではなく、オーナー自身のライフスタイル展示場なのかも。ぜひ訪店してその面白さを体感してみてください。
めずらしい福岡の米軍ハウスで、ショッピングとオーナーの暮らしぶりを同時に楽しむことができるホームショップ
最後まで読んでくれた方へ
一極集中を避け、環境の良い場所で各々が効率よく仕事をしてストレスの少ない日常を送ることのできるこのワーケーションという働き方は、社会にとっても有益なことと思います。その定着をこの機会にできるかが、今後の私たちの暮らしにおいての大きな鍵。その後押しの一翼を、福岡のこのエリアが担えればと考えています。
Access
福岡空港から西戸崎・志賀島へのアクセス
電車の場合
レンタカーの場合
高速道路を使わずに
45分で行けます