1.課題解決として「親子ワーケーション」がもたらす三方よしの魅力

ワーケーションが広がる一方、「子どもがいるから参加は難しい」という声は、導入企業にとって大きな課題でした。
この課題を解決するため、観光庁は令和6年度に「子育て世代も参加可能な業務型ワーケーション」のモデル実証事業を開始。背景には、子育て世代の3割以上、特に20代では6割以上がワーケーションに関心を持つという高いニーズがあります。
採択された3つの事業者の先進事例を詳しく見ていきましょう。
出典:観光庁
1-1.【長崎県】DEI推進と関係人口の創出モデル
毎日新聞社が長崎県で実施した事業は、企業のDEI推進と、将来の移住定住にも繋がる「関係人口」の創出を目的としています。
- 子どもの居場所の確保
- 五島市の「小学校体験入学制度」や、長崎市内のホテル敷地内保育園を活用し、親が安心して働ける環境を整備しました。
- 親子目的別のプログラム
- 親には「移住起業家との意見交換会」、子には「郷土料理作り体験」など、それぞれに有意義なプログラムを提供。結果として、子どもの満足が親の満足度を高め、異業種交流が企業に新たなビジネスのヒントをもたらすという、三方よしの好循環を生み出しました。
1-2.【岐阜県飛騨市】フルオーダーメイド型企業研修
株式会社Edoは、岐阜県飛騨市で「教育×地方×企業ワーケーション」をテーマに、企業ごとの課題に合わせたオーダーメイド研修を造成しました。
- 多様なニーズに対応
- トヨタ自動車や丸井グループなど、参加企業の「働き方改革」や「新規事業創出」といった多様なニーズに応じたプログラムを個別に設計しています。
- 地域資源を活かした体験
- 子どもの預け先を確保しつつ、親子で参加できる「木工体験」や「食育ワークショップ」など、飛騨の地域資源を活かした体験を組み込んでいるのが特徴です。この取り組みの結果、参加企業で人事制度の見直しが決まるなど、具体的な成果に繋がっています。
1-3.【広島県竹原市】農村リトリート宿を拠点とした合宿型
農ライファーズ株式会社は、広島県竹原市の農村リトリート宿を拠点に、仕事・子どもの教育・休暇を同時に行う合宿型プログラムを造成しました。
- 「保育園留学」との連携
- 他県からの子ども受け入れ実績が豊富な「中央こども園」と連携し、親が安心して業務に集中できる環境を提供。園での子どもの様子を写真で共有するといった配慮もなされています。
- 農村ならではの体験価値
- 子ども向けには「畑での収穫体験」や「田舎料理づくり」、親子でコミュニケーションを取りながら入れる「ミストサウナ体験」や竹原の町並み観光など、都会では味わえない農村ならではの体験を提供。
また、日本航空株式会社広島支店と連携した情報発信も積極的におこない、営業販路の拡大にもつなげていました。
2.世界が注目!日本にやってくる「デジタルノマド」たち

ワーケーションのもう一つの新しい潮流が、ITスキルを武器に世界を旅しながら仕事をする「デジタルノマド」です。その数は世界で3,500万人以上、市場規模は約110兆円にものぼると言われ、日本でも誘致の動きが本格化。
2024年4月には国際的なリモートワーカー(デジタルノマド)向けの在留資格制度が施行されました。
一般的な観光客より滞在期間が長い傾向にあるデジタルノマドの長期滞在を可能にするため、最大6ヶ月の滞在が可能な制度を導入し、消費額の増加やビジネスマッチングなどによるイノベーションの創出にも期待を寄せています。
では、具体的にどのような誘致の取り組みが行われているのでしょうか。採択された3つの事業者の先進事例をご紹介します。
2-1.【宮崎県日向市】地域資源を活かしたターゲット特化型モデル
宮崎県日向市は、国内ワーケーションで培ったノウハウを活かし、デジタルノマドという新たな市場開拓に挑戦しました。
- 明確なターゲティング
- 市の地域資源である「サーフィン文化」に着目し、『サーファー・デジタルノマド』にターゲットを特化。さらに経済的な繋がりが深い『韓国コミュニティ』にも的を絞り、提供価値を明確化しました。
- 地域コミュニティとの連携と成果
- 地元のサーファーコミュニティが交流会を主催するなど、地域を巻き込んだ取り組みが参加者の満足度を大きく向上させました。結果として、14日間の滞在で約500万円近い消費を生み出す成果にもつながりました。
2-2.【福岡県福岡市】ハブ機能を活かした広域連携モデル
福岡市は、都市機能と交通の便の良さを「ハブ」として活かし、近隣の五島市、別府市、長崎市と連携する広域受け入れモデルを構築しました。
- ビジネス機会の創出
- 滞在に加え、スタートアップイベントやビジネスマッチングを開催し、ビジネス拠点としての価値も提供しました。
- 大規模な集客と経済効果
- 世界最大のデジタルノマドコミュニティも活用した結果、2024年のプログラムには海外から226人が参加し、滞在中の消費額は約1億1,000万円と推計される大きな経済効果を示しました。
また、福岡市をハブとして五島市、別府市、長崎市と連携してショートトリップを実施。九州周遊がデジタルノマドのニーズにマッチしたことを受け、参加者アンケートでの満足度も高い結果となりました。
2-3.【和歌山県白浜町】デジタルノマド”家族”向け長期滞在モデル
株式会社キッチハイクは、和歌山県白浜町を舞台に、子どもを持つ「デジタルノマド家族」にターゲットを絞り、3〜6ヶ月という超長期滞在のプログラムを造成しました。
- 「保育園留学」を海外へ展開
- 国内で実績のある「保育園留学」の仕組みを活用。子どもは地域の保育園に通い、日本の情操教育や文化を体験でき、親はその間に安心して仕事に集中できる環境を整えました。
- ワンパッケージでの高付加価値化
- 事前の各種手続き支援から、住居、保育園、現地コーディネーターによるサポートまでを全てパッケージ化。これにより、価値に見合った高価格での販売を可能にし、事業の持続性を確保するモデルを構築しました。
まとめ

観光庁の最新レポートが示す「親子ワーケーション」と「デジタルノマド」という2つの潮流。
これらはワーケーションが、参加する「人」、受け入れる「地域」、そして送り出す「企業」の三者に新たな価値をもたらす戦略的なステージへと進化したことを示しています。
これまで参加が難しかった子育て世代も、地域のサポートと目的あるプログラムによって、家族との時間とキャリアを両立できるようになり、世界を旅するビジネスパーソンは、地域と深く繋がることで、新たな経済的・文化的インパクトを生み出す存在となります。
今回ご紹介した先進事例に共通するのは、地域の特性を活かし、参加者のニーズに真摯に向き合ったプログラムを設計している点です。
働く(Work)と休暇(Vacation)を組み合わせ、多様で豊かな働き方・生き方を実現する。この新しい潮流をヒントに、あなたの目的にあった地域サービスや制度導入を考えてみませんか?